2006年 F1 第3戦 オーストラリアGP
過去数年開幕戦だったオーストラリアGP。今回は第3戦として開催されました。レース展開は4度のセーフティーカー(SC)が出る波乱の展開。しかし予選3番手からのアロンソが今期2勝目を上げ王者の貫禄を見せつけてくれました。
解説でも話をしていましたがルノーはタイヤ温度をすぐ高く持っていくのが非常に素晴らしいようですね。それのお陰で4回のローリングスタート直後のラップもかなり速く、後続を楽に引き離していけたようです。全く逆だったのが今期初PPのバトン・・。
最初のスタートは必死でアロンソを抑えていましたので、あのままSC出動が無ければまた違った展開になっていた可能性はありますが、それにしても予選でのここ一発の速さは問題ないのですがレースになると・・。これは去年から継続している問題ですね。ルノー・マクラーレンと比べタイヤ温度を上昇させるのに苦労していますので最大グリップを得られるまでに数週を要する感じでしょうか。その影響が4回のSCスタートでモロに出ましたね。結果ゴール目前でエンジンブローという何とも悲劇的な終わり方をしておりました。ブレーキを掛けあえてチェッカーを受けなかった(5位ポイントを捨て、次戦エンジン交換の10位降格ペナルティを受けない方を取った)のは、ホンダらしい考え方だとは思いますが・・。
ホンダはこのままでは上位陣の総脱落などがない限り、今年も勝つのは難しいのでは?と思わせるような内容でした。PPを取っても仮にゴールしたとして5位ですからね。マシンそのものは良いのですがいかにタイヤ温度を早く適正なところまで持っていけるか?ということでしょうか。ルノーは去年もそうですがメカニカルグリップが相当良いマシンなのだと思います。
我がSAF1ですが、今期初の2台完走!。亜久里代表も当初の目標を達成してホっとしているところでしょう。勿論戦えるマシンを急いで開発しなければいけないのは当然ではありますが、それでも今のマシンでこれだけ頑張っているのは賞賛に値すると思います。琢磨は今回スタートの混乱を上手くすり抜け、12位まであがっていました。その後は本家ホンダのバリチェロ・クルサードを従えての堂々の走り。今回も国際映像で映っていましたし、タイミングモニターでも琢磨のロケットスタートをコメントで表記したりと、何だかBARでの2005年シーズンよりも注目を浴びているような;;。現時点では順位はともかくとして、琢磨は今出来うる最大限の走りをしています。そして完走を続けているところも嬉しいですね。過去BAR在籍中にミスから自滅というレースが多かったことを考えると今の我慢の走りはきっとこの先に役立つ経験として生きてくると思います。青旗無視?で注意を受けたそうですが、恐らくラスト数週でのバトン・フィジケラのバトルのところだったと思うのですが、私が見る限りでは追いついてからスムーズに抜かせていたと思うのですが・・。個人的にバトンが来た時に「抑えこめ!」と思ったのは内緒で(笑)。
井出も嬉しい初完走ですね。フリー・予選とスピンを繰り返し赤旗の原因にもなったりで、マシンの調子はかなり悪いと思いますが良く耐えてくれてると思います。間違いなく現状のマシンはどうしようもない状態だと想像出来ます。琢磨との差も経験だけの差ではないと断言できますね。
それを裏付けるエピソードとして、彼のマシンが開幕前のテスト時に始めて用意されるとき、チームから「シートが間に合わないけどマシンを向上させる」か「シートを間に合わせるけど、マシンの向上は厳しくなる」という選択を求められたそうです。当然ドライバーとしてはマシンの戦闘力を求めるでしょうし前者を選択したようです。そのためA23アロウズのマシンについていたフェルスタッペンのシートをそのまま井出は使っていたようです・・。勿論パッド等で改修はしたようですが、それでも自分に合わない他人のシートでまともなドライビングポジションが取れるはずないです。そういうことも我慢して開幕前後は望んでいたようです。
もう一つ驚きだったのが、井出が乗っているSA05はフェルスタッペンがアロウズ時代に乗っていたマシンA23そのものであり、以前から「オーストラリアに公開展示されていた車両」のようなんです。それを元ミナルディのストッタード代表から知的財産権購入でマシンの使用が可能になったのですが、井出のマシンはそのオーストラリアに飾られていたアロウズマシンをイギリスに空輸し、それを大改造してSA05に仕上げたそうです・・。琢磨のマシンは恐らくですが設計図から新しく作ったモノコック(要するに新規作成されたかA23ベースのSA05)か、予備の使用頻度の少ないA23だと思いますす。しかし井出のマシンは過去実際にF1を戦ったマシンを無理やり使っているため、かなり車体のヨレ等あるのではないでしょうか。そういう事を考えるとセッティングが出にくい、走りにくい、というのも分かる気がしますね・・。中嶋が初参戦した87年、アイルトンのマシン差が相当あったようで、右コーナーはアンダー、左コーナーはオーバーが出るマシンだったようです。これがNo.1とNo.2の差なんでしょう。サンマリノGPで決勝前にトラブルが出てアイルトンのマシンに乗り換えた中嶋ですが、このマシン(アイルトンのTカー)は全くそのような症状は無かったと後に語っています。
そのような裏事情の中、SAF1の2人は頑張っているということです。特に井出に関してはこの状況を何とか打破して、決して腐る事なく頑張ってもらいたいものです。初完走のステップは通過しました。次からは琢磨との差をどれだけ詰めていけるかですね。経験の差は大きいですが、見てる人は見てると思います。