F1=スポーツ?
昨今のF1って完全なマネー至上主義になってしまって、ドライバーの実力は二の次になっている。
これまでのF1って、幼少時のカート時代から実力でステップアップして、F1に辿り着くドライバーの実力差は殆ど無かったけど、今じゃ実力あるドライバーより、実力が無くても大金用意出来るドライバーが重宝される時代。
以前吉本選手も言ってたけど、今はそれプラス実力もそれなりにあるけど金も持ち込めるドライバーが多くなってきている事も問題の一つとして考えられる。
本来、数年前にパジェットキャップという予算制限が行なわれるはずで、それを前提に新規チームが参入してきた。それがHRTでありマルシャでありケータハムだったけど、今やその話も無かった事になり、青天井な年間予算+本年度より採用されたV6ターボ+ハイブリッドシステムといった超高額なエンジン規定により、開発費は高騰、それをリースしなければいけない非メーカー系チームの料金も跳ね上がり、それにより新規チームは全て壊滅してしまった。また中堅チームであるフォースインディアやザウバーもいつ撤退してもおかしくないくらいに資金繰りに困っている状態。
年間予算400億円を超える今のF1では、メーカー系チームや世界的に大きな企業が後ろ盾にならないと、絶対に生き残れないものになってしまっている。そうなれば必然的にカネを持ち込めるドライバーが優遇されるという悪循環に陥ってしまうのが今のF1。
現在のF1ドライバーでも20億円や30億円を持ち込んでシートを得るというから驚き以外の何者でもない。
チームにしても、それだけの資金を持ち込めるドライバーなら、多少実力が無くても優遇するのは致し方が無い部分ではあるけど、本来のスポーツではないと思うのは私だけだろうか。
本来スポーツというのは、実力あるものが活躍し、その見返り(お金)を得るのが自然。
実際、一握りの有力チーム所属のドライバーは年に数十億円を稼いでいるけど、給料ゼロ・数億レベルのお金を「払って」乗っているドライバーの方が多いという異常な世界なのが今のF1。
今年、テニスの試合を見ていて改めて思う。
錦織圭という日本の実力者が、まさに「実力」で頂点に上り詰めようとしている。
今年の年間賞金獲得額は5億円を越えたとの事。日本の有名企業がスポンサードし、恐らく個人収入としてはそれを遥かに上回るであろう。その活躍に日本中が沸いた今年。まさにこれが「スポーツ」であり、実力者が有名になり多額の賞金を得るという自然な流れではなかろうか。
そんな中、小林可夢偉という男は、カート時代からテレビ出演したりと実力で名を馳せ、フォーミュラへステップアップしトヨタの育成ドライバーになり、GP2を経てトヨタF1(当時)のリザーブドライバーになるという、トヨタ育成ドライバーの中では一番出世した存在と言っても良いかと思う。そして当時トヨタF1ドライバーだったグロックの欠場によるワンチャンスが到来し、ブラジルGPとアブダビGPにスポット参戦。
共に一時3位を走る好走、アブダビGPではチームメイトで優勝経験もあるトゥルーリよりも前の6位チェッカー。実力で翌年のシートを手に入れた。移籍先のザウバーチーム代表、ペーターザウバーからも「彼は日本で初めて自分の実力のみでシートを手に入れた」と発言。キッカケはトヨタという後ろ盾があったものの、それ以降は実力で掴み取った「スポーツ」そのものだった。
その後の活躍は言うまでもなく、2012年鈴鹿で行なわれた日本GPでは日本人3人目となる表彰台を得る事に。彼の未来は明るいものになるはずだった。しかしこのシーズン頃から全ての歯車が狂いだしてきた・・
翌年ザウバーへの残留は「持ち込み金」が必要といわれるくらいにチーム運営が厳しくなりだしてきていた。結局メーカーの後ろ盾もなく、有力企業のサポートも殆ど無いまま、実力だけで戦ってきた可夢偉は遂にシートを失う事になってしまった。
2013年はWECに活躍の場を求めたものの、F1復帰を諦めていなかった可夢偉は2014年にケータハムチームへのドライバーとして復帰する事が決まった。しかしここでも2012年末に自ら募った「KAMUI SUPPORT」という募金という形で集めた約2億円近いお金を持ち込んでの事だった。
そして今年。
走らないマシンに苦戦し、シーズン途中でチームオーナーがカネの掛かりすぎるF1にさじを投げた。
怪しげな投資グループに売却されたチームは、カネを持ち込めるドライバーを優先する事になり、20億といわれる資金を持ち込んでいた、可夢偉より「1秒遅い」チームメイトに良いパーツを全て注いでいく。それは「月払い」でスポンサー料を振り込んでいたチームメイトを蔑ろにすると、そのお金が途絶える危険があったからだという噂だった。
戦闘力を更に失うマシンで頑張る可夢偉。そして、それは遂に資金を持ち込むドライバーにシートを奪われる結果にまで発展していく。契約上年間通して走れる契約を持っていたものの、それを飲み込みチームのために1戦のみシートを譲った。
そしてロシアGPでは足らないスペアパーツのため、カーボンで補修した危険極まりないサスペンションパーツを使ったマシンで怖い思いをしながら予選を走る。そして決勝では「次戦以降のエンジンマイレージを残す為」強制リタイアさせられる。もはやこの時点でスポーツではなかった。
そしてこの後にチームは破産。管財人の下にチームは管理される。
そしてアメリカGPとブラジルGPはチームも欠場、このまますべてが終わると思われていた。
ケータハムは最終戦アブダビGPに出場する為、募金を始めた。
F1界では「みっともない事をするな」と批判の的だったし、個人的にもどうせ可夢偉が乗ることもないだろうし、どうでも良いとさえ思っていたが、最終戦はチームが参戦する事が確定した。チームスタッフ230人を解雇したと報道のあった同じ日のことだった。恐らく最低限のチーム帯同スタッフのみ「アルバイト」として再雇用したとか、そのような方法であろう。
そしてドライバー人選。今のF1ではシーズン中最大4人のドライバーを走らせる事が可能で、それ以上になるとよっぽどの理由が無いと認められないとの事。今年ケータハムはレギュラードライバーとして、小林可夢偉とマーカスエリクソンを走らせていたのと、ベルギーGPで可夢偉の代わりにアンドレロッテラーを走らせていたので、枠としてはあと1人分しかないはずだった。そのエリクソンはケータハムと契約解除し、来季ザウバーに移籍する事が決定(これも多分に金が絡んでいる)。ロッテラーにも最終戦ドライブの打診があったようだが、走らないマシン+持ち込み金の兼ね合いで断ったという事だから、事実上全く新規の金を持ってくるであろう2人のドライバーで戦う事は出来ず(5人目のドライバーが走れない)、その消去法から、可夢偉が最終戦ドライバーになる事が正式に決まった。
もしロッテラーが「走る」という事になれば、もう一人は確実に可夢偉ではなかったであろう。
こんなある意味屈辱的な状況にも可夢偉はとても前向きであった。
純粋にレースを楽しもうと。
最終戦、可夢偉のチームメイトは実力よりもどれだけカネを持ってこれるドライバーがいるか、に重点が置かれるはずだし、実際そのようなドライバーがチームメイトになるだろう。
そしてベルギーGP以降にアップデートしたパーツ類がそれなりの戦闘力を示していたが、それらは可夢偉は使えず、主にカネを持ち込んでいた実力で劣るチームメイトに与えられていた事から、最終戦にそのアップデートパーツ(恐らく1台分しかない)が誰が使うのか非常に興味のある部分ではあるが、それでも可夢偉は前を向いているように思う。
最終戦、心から全力で可夢偉を応援しようと思う。
スポーツとしてF1が存在するのであれば、彼のような実力のある若い日本人がこのまま消えていくのはどう考えてもおかしいと思うし、日本のモータースポーツ界の損失としか言いようがない。
自動車大国の日本がどうして彼をサポートしてやらないのか。
大手自動車メーカーは、どうして助けてやらないのか。
H社さん。もしくはT社さん。
もっと大きな視野で物事を見なければいけないと思います。
今彼を助ける事が、どれだけ多くの日本、いや世界のモータースポーツファンが見ているか、しっかり認識しなければいけません。それが自社にとってどれだけ大きな意味があることか、も。賞賛はあれど批判される事は一切ない事だと思います。
特にH社さん。
個人的にはマクラーレンのレギュラードライバーにしろ、とは言いません。
マクラーレンというチームの意向もあるから仕方が無い事かもしれません。でも、彼を自社傘下に置くことによる意味はとてつもなく大きいと思います。
また2016年よりカスタマー供給可能になるであろう別チームへのドライバー登用も可能になるだろうし、我々日本人ファンはそれまで夢を繋ぐ事が出来ます。
我々ファンは、どのメーカーが頑張ったかを見ているのではありません。
応援する母国ドライバーが活躍して、初めてその使っていた道具(メーカー)に対しても賞賛するのです。
これだけは忘れないで欲しいです。
日本のモータースポーツが「文化」として根付く為には、どうすればよいかを。
最後に、可夢偉のFBで友達限定として公開された投稿がある。
それを先輩であり、友であり、弟のような存在として慕っている吉本選手がシェアしていた。
それは現時点では一般公開されているものなので、以下に転載させていただく。
(※原文から少し読みやすく修正しています)
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明日か明後日からF1最終戦に向けてアブダビへ出発します。
ここだけの話、もしかするとこれがF1での最後のレースになるかもしれない。
いや、そうはなりたくないけど、時が進むのと一緒で、必ずしも物事は自分の思い通りにはなりません。
でも僕はやる事に価値があると思うし、後に後悔はしたくないです!
だから最後まで戦うし、戦いの為に出した判断は正解じゃないかもしれない!
1つ言えるのは、僕は神でも天才でもない!
僕は尼崎の寿司屋の息子です!
どうしようもない人間です!
そんな僕をここまで支えてくれたファン、友、親、そしてスポンサーの方、色々と叱ってくれた先輩達、心からありがとうございます!
このF1人生約10年近く、いや、モータースポーツ人生約20年近くの集大成として、今週末のアブダビGPを戦おうと思います!